Valorant Champions Tour Stage3の影響で、日本シーンのさらなる盛り上がりを見せているValorant。
9月に行われた世界大会に続いて、10月11日からは「Valorant CHAMPIONS」への出場をかけた最後の戦い、「Valorant Champions Tour 2021 APAC Last Chance Qualifer」が開催されます。
日本からはREJECT・Northepiton・FENNELの3チームが参戦します。
今回はこのラストチャンス予選(LCQ)前に、FENNEL所属のTENSAI選手にインタビューをさせていただきました。
韓国から日本に来た留学生プロゲーマーとしての今までの経歴や、ラストチャンス予選にかける想いを伺いました。
TENSAI選手の経歴 – 留学生から学生プロゲーマーへ
――この度はインタビューをお受けいただきありがとうございます。まずは自己紹介をお願いいたします。
TENSAI:プレイヤーネームはTENSAI、年齢は今年で21歳です。留学生として大学に通いながら副業という形でプロゲーマーをやらせてもらっています。
チーム内の役割としては、Jinx選手やenvy選手といった日本語が話せない選手たちにプレイ中の通訳などをしていますね。
IGLが指示したことを彼らに伝えるだけでなく、逆に彼らの意見をIGLに伝えたりもしています。
※IGL:ゲーム内での全体的な指示を行う役割
――ありがとうございます。TENSAI選手がチーム内のコミュニケーションを支えているのですね。
TENSAI:そうですね。また試合のフィードバックの内容や、チームの運営方針なども日本語で書かれているので、その書類を自分が韓国語に書き換えて選手たちに送ったりもしています。
――日本語ができるゆえにマネージャーのような役割も果たしているのですね(笑)。
TENSAI:そうですね(笑)。
――現在は留学生として日本の大学で学びながら、Valorantのプロゲーマーをやられているとのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
TENSAI:現Crazy RaccoonのFiskerさんから、FAV gamingに誘われて加入したのがきっかけですね。
Fiskerさんは自分が今でも恩人と思っている選手ですね。
こんな感じでなんとなくプロゲーマーになったのですが
— FENNEL TENSAI (@hstalavsta) August 14, 2021
この一年マジで人生においてたくさん学んだ気がする
誘ってくれた @2ert_fps さんには感謝しかない
明日たのんました本当 pic.twitter.com/pJl9SqIcmx
――なるほど、そうだったのですね。ちなみに日本に留学してくる前は、プロゲーマーという選択肢は考えてなかったのでしょうか?
TENSAI:そもそもゲームがめちゃくちゃ好きだったので、プロゲーマーになりたいという漠然とした気持ちはあったのですが、やっぱり現実としてプロゲーマーは難しくて。
自分の家はそこまで裕福な家庭ではなかったので、自分の夢ややりたいことを諦めて、安定的な収入が得られる職業を目指していました。
――その手段として留学を選ばれたのですね。
TENSAI:そうですね。元々韓国の進学校に通っていて、スポーツなどにも取り組んでいたのですが、結局何もかも才能がなくて、「何をすればいいんだろう?」という悩みの時期もありました。
ただ中学生のときから日本語はできるようになっていましたね。
あと人生で初めて行った大学が日本の大学で、東京大学だったり、大阪大学だったりを見学する機会がありました。その日本の大学の雰囲気が好きで、海外の大学に行きたいという漠然とした思いはありました。
そこで高校生のときに考えた結果、韓国にいるより、今自分ができる日本語を活かして日本で職を得るほうが良いと思い、日本に来ることになりました。
――現在も日本語でインタビューを受けていただいていることもそうですが、中学生の頃から日本語ができたというのは驚きでした。これはどのように学ばれたのですか?
TENSAI:学んだという感じではないですね。趣味が本を読んだり、書いたりすることで、一番最初の夢は作家になることでした。
それで日本のアニメや漫画というサブカルチャーに触れていく機会も多くて。1~2年これらを見ているとやっぱり慣れてくるものがありました。
この発音だったらこの意味だよね、みたいな(笑)。それである程度日常会話はできるようになりました。
高校のときに留学を決めたあとは、大学受験があったので漢字などを別で勉強しました。
――TENSAI選手がはじめてプロになったのはFAV gamingのValorant部門だと思いますが、それ以前はどのようなゲームをプレイしていましたか?
TENSAI:自分が初めてゲームをやりはじめたのは3歳のころでした。自分と同じ街に10歳くらい年上のお兄ちゃん的存在の人がいたのですが、そのお兄ちゃんの家にパソコンが1台だけあって、毎日毎日遊びに行ってPCゲームをしている様子を見てました。
だんだん見てるうちに、自分もパソコンが欲しい!と思って(笑)。
その時、親戚に家電の会社で働いている姉さんがいたのですが、僕がパソコンをねだっている様子を見たからか、余っている昔のパソコンを1台送ってくれました。
そのパソコンでゲームをしたのが初めてですね。
――なるほど、ちなみにその初めてプレイしたPCゲームはなんでしょうか?
TENSAI:ボンバーマンですね(笑)。4歳になってからは、オンラインFPSが流行っていたのでサドンアタックをやり始めました。これは小学校の2~3年生くらいまでやってましたね。
そこからはCounter Strike1.6をやったり、中学校入ってからはCounter Strike OnlineやCounter Strike Global Offensiveをやってました。その時はLeague of Legendsも並行してプレイしてました。
――4歳の頃からFPSに触れていたのですね。
――学生プロゲーマーということもあり、かなりご多忙な日々を送っているのではないかと思いますが、普段は大学やチーム活動など、どのようなスケジュールで過ごされていますか?
TENSAI:なるべく授業は全部午前中にぶちこんでます、1限や2限とか、遅くても4限とかですね。今までの授業はすべてフル単でとっているのですが、家庭状況的に奨学金を受けていることもあり、授業の成績は落としてはいけなくて。
授業が終わり次第、速攻で家に帰って練習です。練習は11時から12時ごろにおわるので、今日の分の課題だったりをそこからする、といった感じです。
――そこからまた1限に行って・・・ということですよね。かなり大変だと思います。
TENSAI:そうですね。これをFAV gaming時代から1年くらい続けてます。ただどうしても時間的に厳しくて(笑)。
現在は2年生になって、ゼミを選ばないといけないのですが、ゼミがあるとどうしても学校にいる時間が多くなってしまいます。ここに関してはチームと相談中ですね。
あと配信もがんばりたいので、なるべく朝イチからやって授業に行くということが多かったです。
――TENSAI選手はソーヴァ使いとしても有名で、ショックダーツやリコンボルトの研究力の高さが目立ちます。この研究はチーム練習時間外に行われているのでしょうか?
TENSAI:まずベーシックなショックダーツはYouTube等で調べますね。そしてプレイしていく中で「こんなショックダーツがあったら便利だな」というのが思い浮かんだりすれば、スクリムの間の休憩時間で研究したりします。
あと休みの日なんかは、誰かに手伝ってもらってガッツリ研究するときもあります。
FENNEL加入後初の大会「VCT Stage3」

――前回のVCT Stage3はFENNELに移籍されて初めての大会でした、4位という結果でしたが、この結果はいかがでしたか?
TENSAI:自分って今まで何をやっても1位をとったことがないんですよね。今までピアノだったり、スポーツや勉強をやって、何回も挫折してきました。
1位を目指す立場から言うと、4位というのは近いようで遠いんですよね。
さらに今回のVCTは練習時間が1ヶ月もないくらいで、最初は不安で、4位どころか予選突破も厳しいんじゃないかと思っていました。
かけた練習量に対して、4位という結果は良かったと思っていますが、それに全然満足はしてないですね。
少なくとも世界に認知されるにはリージョンの決勝まで上がらないといけないと思ってて、そういう意味ではまだ決勝に一度も行けていないので、プロゲーマーのスタートラインにすら立ってないですね。
ラストチャンス予選にかける想い

――ZETA DIVISIONがラストチャンス予選(LCQ)を辞退したこともあり、FENNELがLCQに出場する形となりました。突然の出場と言った形ですが、チームの練度はいかがでしょうか?
TENSAI:元々は10月4日までオフシーズンで休みの予定だったんですよね。ただLCQに急遽出場することになったので、休みを返上して練習しています。
他の急遽出場することになったチームと、練度の差はないと思います。
ただ現状として、練習時間の絶対量は足りていないので、厳しいところはあると思います。
でもやっぱりそこを厳しくても何とかして結果を出すのが我々の立場なので、ファンの皆様が心配しなくてもいいくらいに仕上げていきます。
――VCT Stage3の期間から、チーム全体で特に強化された点はありますか?
TENSAI:やっぱり始めはコミュニケーションが中々うまく行かなかったんですよね、お互いが思う当たり前のラインが違ってて。
Jinxや自分の当たり前が、他のメンバーの当たり前ではなかったりという感じです。こういった考えのすれ違いがありました。
自分が加入して半年弱になって、そういうところは修正できたのではないかと思います。
――TENSAI選手から見て、今のFENNELはどのようなチームになっていますか?
TENSAI:今のチームは、よくも悪くも色んな色が出せるチームですね。良いところとしては、多国籍チームなので、各自メンバーの個性がバラバラで、敵からしても対策が取りにくいのかなと思います。
ただ逆にこれが足を引っ張っているところもあります。コミュニケーションだったり、文化の違いだったりですね
韓国と日本は距離的にめちゃくちゃ近い国ではあるのですが、やっぱり国民性や考え方が違うところがあります。
僕なんかはフィードバックのときに厳しく言うタイプなんですが、これが日本の文化には合わなかったりします。
ただこういう面は徐々に修正できているので、今後は良くも悪くもではなく、多国籍によるいい色を出せるチームになるんじゃないかなと思っています。
――ありがとうございます。ラストチャンス予選初戦はインドネシアのBOOM Esports、そこからNUTURN Gamingと強敵ぞろいですが、いかがですか?
TENSAI:BOOM EsportsはCS:GOの頃から同じメンバーで何年もプレイしている強豪チームなんですよね。ただ強豪チームであるからこそ、弱点は見つかりやすいんじゃないかなと。
NUTURN Gamingも、長くCounter Strikeを韓国リージョンでプレイしてきたメンバーなだけあって、僕も色んなものを見てきました。
今現状の世間の評価は、僕たちがアンダーグラウンドで格下と思われるかもしれませんが、格下だからこそ見えるものはあるんじゃないかなと思ってます。なのでそこを掴んでいけば、勝利自体は可能だと考えています。
――TENSAI選手がLCQで意識しているチーム・選手はいますか?
TENSAI:意識しているチームで言えば、韓国リージョンのNUTURN gamingだったり、F4Qですね。
特にF4QのEsperanza選手は縁があって少し話をしたこともあって、意識しています。
当時Esperanza選手は所属のT1 KRが解散して、チームを探している最中だったので、日本チームの枠が空いているかどうか等の話をしていました。
今ではこうやって世界大会にも出場する強い選手なので、今回のLCQで敵として対戦してみたいですね。
――最後にLCQにかける思い・目標をお聞かせください。
TENSAI:今回のLCQは世界大会に繋がる入り口です。世界大会の経験があるかどうかは、プロゲーマーとして大きな差が生まれるところだと思っています。
その世界大会に出場できるチャンスがここにあるので、どうしても日本代表として世界大会に出場してみたいですね。
あと僕は未だに家族にプロゲーマーやってるってことを言ってなくて(笑)。普通にバイトしてるってことになってます。
世界大会に出場できたら、その舞台で家族に言おうかなと思ってます(笑)。
なので、今回のLCQはどうしても勝ちたいという思いがあります。
――最後になんともサプライズな発言がありました(笑)。これからのご活躍を応援しております。
TENSAI選手
Twitter:@hstalavsta
Twitch:tensai_valo
FENNEL
Twitter:@FENNEL_official