eSportsコーチ・アナリストの仕事とは?FAV gaming Valorant部門のRetloffさんにインタビュー。

eSportsコーチ・アナリストの仕事とは?FAV gaming Valorant部門のRetloffさんにインタビュー。

Valorant Champions Tour(VCT)の影響もあり、さらなる盛り上がりを見せているValorant。

特にVCTでは、各チームのコーチ&アナリスト陣による作戦や対策が光り、勝敗に大きな影響を与えていました。

今回の記事では、FAV gaming Valorant部門のコーチ兼アナリストを務めるRetloffさんにインタビューさせていただきました。

Retloffさんの過去の経歴から、Esportsコーチ・アナリストの仕事、そして新生FAV gamingのこれからについて伺いました。


SF2の選手から、FAV gaming Valorant部門のアナリストへ。

――まずは自己紹介をお願いします。

Retloff:Retloffと申します。24歳です。元々はSF2(スペシャルフォース2)で活動していて、国内大会優勝・国際大会にも出場していました。

現在のFAV gaming Valorant部門には、当時のメンバーであるFiskerから熱い勧誘をを受けて加入することになりました。現在はアナリスト兼コーチとして活動しています。よろしくお願いいたします。



――これまでの経歴について伺ってもよろしいでしょうか?

Retloff:PCゲームを始めたのが14歳の頃ですね。スカッとゴルフ パンヤという計算を用いて、弾を打ってチップインさせるっていうゴルフゲームなんですが(笑)。


高低差や距離、風速、風向き、クラブのパワーなどの影響を考え、頭の中で式を作って計算します。
スカッとゴルフパンヤにおいて、電卓などを用いた計算は公式で”規約違反”とされていたため、オフライン大会ではもちろん、オンラインの試合においても暗算が求められました(笑)



計算の過程や結果をチャット欄に残しておくなど、今では考えられない手法が取られていましたね 。(笑)

画像:Gigazineより引用

――この頃からアナリストの片鱗が出てますね(笑)。

Retloff:こういうゲームが好きでやっていて、大会にも出たりと結構ガッツリハマってました。

そして15歳ごろからCounter Strike 1.6やサドンアタックなどのFPSをプレイし始めました。

ただ、その頃のサドンアタックはチート問題がひどくて、SF2に移行した形になります。

画像:Retloffさんが出場された大会の写真。Game Watchより引用

Retloff:国内公式大会で優勝したり、日本代表として日韓戦に出場したりしていたのですが、18歳の頃に現役を引退しました。



――なるほど。なぜ引退を決められたのでしょうか?

Retloff:一から説明すると長くなってしまうのですが。

元々僕は受験して私立の中学校に入っていたんですね。中学2年の春~夏の時点で中学の教育課程がすべて終わって授業がスローペースになったので、FPSに触れる時間が増えたんです。その影響もあり、結構なスピードで上達していったんですよ。それでいつしか国内で一番強いプレイヤーになりたいと思うようになりました。


ゲームに集中する時間を増やすため、高校には通わず、すべて独学で高校の教育過程を終えて大学に進学する道を選択しました。

僕の家系は学歴や就職先にはかなり厳しかったので、当たり前ですが大反対を受けました。そこで18歳までに「ゲームをやって生活できる状況になければ引退する」と決め、取り組みました。しかし、期日までに達成できなかったので引退することにしました。


余談ですが、そこから18歳で高卒認定試験に合格し、受験勉強を経て大学に入学しましたね。
なので15歳から18歳はガチ無職ニート期間です(笑)。両親には本当に迷惑をかけてしまいました・・・。



――なるほど。現在のアナリストのデータ分析などは大学時代に学ばれたのでしょうか?

Retloff:そうですね。IT系やプログラミングに関しては大学時代に独学で勉強していました。

そこでディープランニングによるデータ分析も学んでいたので、アナリスト活動に活かしています。



――そこから、改めてValorantを始めたきっかけを教えてください。

Retloff:SF2の選手を辞めてから、大学時代・社会人時代は全くゲームに触れていませんでした。

というのもその時期ってPUBGやOverwatchがすごいブームだったと思うんですよ。自分でもメディアを見たりして、5vs5って流行ってないんだな~と思ってたんですが、ところがどっこい2020年の6月にValorantがリリースされて、やってみようと思ったのがきっかけです。



――SF2のときはFlareという名前で活動されていたと思うのですが、そこからRetloffという名前に変更されたのは心機一転という意味合いもあるのでしょうか?

Retloff:はい。本当に心機一転です。あとFlareって名前って結構有名な人とかぶっちゃってるんですよ(笑)。かぶっちゃうなら、名前変えようかなというのもきっかけです。



――最初はFAV gamingの選手として加入し、途中からアナリスト兼コーチに転向されたと思います。そのきっかけをお聞かせください。

Retloff:元々選手として活動していたときは、仕事もしながらプロ活動を両立していたんですよね。そこでは中々自分の練習時間も取れなくて。

あと年齢的な問題もあって、集中力も持たないなって思ったんですよね。実力も自分の思ったようなものを出せませんでした。実力の発揮度は現役の頃と比較して、10%も出てなかったんじゃないかと思います。


そこでメンバーやオーナーに相談させてもらったところ、しっかりとした考え方を持ってて、データ分析の経験もあるなら、アナリストをやってみたら?とオススメされたのがきっかけです。


はじめは僕も、アナリストの活動に対してあまりパッとしてなかったんですよね。活動内容もわかりませんでした。

ただ、色々自分で調べたり、他のスポーツではアナリストが主流だと知り、Valorantでも活用できるのではないかと思い、実際に活動をはじめた形になります。



Esportsコーチ・アナリストの仕事について

――RetloffさんはFAV gamingのコーチ兼アナリストとして活動されていると思います。VCT等の大会の影響もあり、徐々に広がっている仕事ではありますが、まだまだ認知されていないと思います。

まずはコーチの仕事内容について、お伺いしてもよろしいでしょうか?

Retloff:コーチの仕事内容は大きく分けて3つになると思ってます。

1つ目は大会やスクリムなど、普段の試合・練習のフィードバックですね。2つ目は海外の大会を見たりして、自分の知見を広げる活動。そして3つ目は、これが結構重要なのですが、選手個人のメンタル管理ですね。

面談じゃないですけど、最近の調子や悩みを聞くことで、選手のメンタルを安定させてあげるのも仕事です。



――なるほど。試合のフィードバックというのは、他のスポーツですと、技術面等の指導が多いと思っています。Esportsのコーチの指導は技術面もあるのでしょうか?それとももっとマクロな、全体的な作戦・動きを伝える場合が多いのでしょうか?

Retloff:コーチのフィードバックの中には、個人的な技術と、マクロな戦術面に分けられるんですけど、一番多いのはマクロ面ですね。


個人の技術に関しては、プロが個人で研究したりするんですよね。ソーヴァのリコンボルトであったり、ショックダーツであったり。もちろん必要な場合は持ってくるのですが、基本的には選手に任せたり、選手が自分から持ってくる場合が多いです。



――VCTでは、各チームの面白いセットアップ・作戦が見られました。あのような作戦を考えているのも、コーチなのでしょうか?

Retloff:これに関してはチームによるんですけど、FAVはコーチとアナリスト両方が意見を出し合って、研究材料を用いて決める形になってます。



――Retloffさんが選手たちにフィードバックだったり、作戦を伝える指導の中で意識していることなどはありますか?

Retloff:コーチとアナリストで意識していることは違うのですが、コーチの場合は、選手の意見を第一に考えています。試合するのは選手なので。

コーチやアナリストが、この作戦をやれって言っても、選手が納得していないと結局うまく行かないと思うんですよね。

なので、作戦を決めるときも、選手の意見を一番に汲んで、その上で作戦を考えています。

アナリストで意識していることは”簡潔かつ正確に分析内容を選手へ伝える”ことですね。
当たり前のことですが、無駄に長話になってしまったり、思い込みで話してしまうのは良くないので。



――コーチという仕事は、ゲームの理解度だけでなく、選手のメンタル面や伝える技術が必要になる仕事なのですね。

Retloff:そうですね。コーチやアナリストは、営業等で必要とされる話術やプレゼンの技術もかなり必須になってくると思います。この人何言ってるんだろう?と選手が思ってしまうと、そこで話が終わっちゃうので。



――VCTでも、タクティカルタイムアウトという時間で、コーチとの話し合いの時間が設けられていると思います。あの場では一体どんな事を話しているのでしょうか?

Retloff:試合によるのですが、例えばVCT Stage2のFAV gaming vs Northeption戦で説明すると、そのときは相手の動きとかは事前に研究していたんですよ。さらにそこから相手の特性も割り出していて。

その情報から、「これから相手がやってくる動きは、こんな感じだろうから、こういう対策をしておこう、相手がこういう動きをしてきたら、この動きに変えよう」ということを伝えてました。



――ありがとうございます。続いてEsportsアナリストの仕事内容について伺ってもよろしいでしょうか?

Retloff:コーチの仕事内容は、反省点だとか改善点を試合動画を見てフィードバックをすることだと思うのですが、アナリストの仕事については、そのフィードバックだけでは拾いきれなかった情報を拾うというのが一番のイメージですね。


例えば、相手が2デュエリストのときは勝率が高いのに、相手が1デュエリストのときは勝率が低いのはなんでだろう?というのをデータを用いてフィードバックしていくのがアナリストの仕事ですね。


もちろん国内外の大会を見たり、作戦作ったり、対戦相手やエージェントの研究、スクリムの戦績をまとめたりなどもしますが、この辺はどのチームのアナリストも同じように実践していると思います。



――データからチームの改善点を見つけ出すのが、アナリストの仕事なのですね。

Retloff:まさしく仰るとおりで、そこから逆算して、自分たちに欠けている動きを見つけ出します。

なぜ負けたのか?というのをデータを用いて見つけ出すことが仕事ですね。

リテイクの成功率や少人数戦の勝率、ピストルの勝率やフェイクプレーの成功率、その他諸々から分析します。

また、自分たちはどこのエリアが強いのか?弱いのか?というのをディープラーニングを用いるとわかったりします。

データの数が多ければ多いほど、そのデータは正確なものになっていくので、そういったものを用いて、修正をかけていくのがメインになっています。



――Esportsアナリストは技術面でもかなり進んでいるのですね。私の持つイメージよりはるか先に行っていました。

Retloff:そうなんですかね(笑)。アナリストの仕事って、他のチームからもあんまり情報がなくて、秘密裏に動く事が多いので、わからないのですけれども。



――相手チーム・自チームの分析であったりと、研究に底がなくてかなり大変な仕事のように思えます。

Retloff:当初は結構手作業でやりつつ、一部をディープラーニングに任せよう、といった感じで進めていたのですが、今はそれを自動化できるプログラムなんかも開発してて。そういった意味では楽になってきてるのかなとは思います。



――チームによってはアナリストがいない場合もあります。アナリストのあるなしで、どのような差が生まれてくるとRetloffさんはお考えでしょうか?

Retloff:やっぱり僕はデータって嘘はつかないと思うんですよ。ある結果があって、それに伴ったデータが出る、というのはアナリストじゃないとわからないところもあります。

コーチだけだと、答えが出ているものを見れなかったりするんですよね。

例えば、Bリテイクの成功率が低かったりすると、その改善点を探さないと行けない、みたいな。コーチだけだと、意外とそういった点を見逃してしまうんですよね。


データで見ると、こんなに成功率低かったんだというケースもあります。。アナリストがいるとそれらを正しく改善できると思います。



――コーチの主観的な視点だけでなく、データによる客観的な視点も重要なのですね。

またRetloffさんはルネサンス高等学校とバンタンゲームアカデミーで、Esportsの講師をされていると思います。ここではどのようなことを教えられているのでしょうか?

Retloff:これについては3点ですかね。1つ目はプロになるためのノウハウですね。Valorantがうまくなるためのコツだったりとか、上達するための考え方などを教えています。


2つ目は、プロになったあとに必要となる知識ですね。フリーランスとして直面する確定申告とか(笑)。あと、Esportsのマーケティング市場とかをしっかり説明していきます。

実は日本のEsports市場はまだまだ発展途上である、っていう現実ですね。これってプロにならないと意外と知れないんですよね。高校生とかはピュアで、その辺を知る機会が提供できればと。

加えて、学術的な根拠に基づいて、脳や身体のコンディションの整え方も教えています。


そして3つ目に、人生において役立つ知識とかを織り交ぜながら講義してます。これが僕の講義のスタンスで、講師として意識しているところではあります。



――まさしくRetloffさんにしかできない講義をしているんですね。

Retloff:お金もちゃんといただいているので、そこは出し惜しみせずに、自分のキャリア、例えばガチニート期間とかも逆に利用して、生徒のためになるような授業にしています。



FAV gaming Valorant部門再建について

――FAV gaming Valorantは以前、大幅なメンバー脱退がありました。そのときの正直な気持ちをお聞かせください。

Retloff:脱退や移籍などはプロとして活動するうえで仕方のないことだと思っています。ぶっちゃけ最初は頭が真っ白になりましたが、生活がかかっているのでどんなにつらい状況になろうがやるしかないんです。悲観的にならなかったといえば嘘になってしまいますが、少なくともその時間は短かったですね。
それにファンの方々も応援してくれていたので、せめてその気持ちには答えなきゃなと。


メンバーに対しては移籍先でも頑張ってほしいという気持ちでいっぱいです。それは今も変わりません。
それどころかむしろ、その前のVCT Stage1,2でFAVとして優勝を経験させてあげられなくてごめんって気持ちの方が強かったですね。



――ありがとうございます。Retloffさんが思う、現在の新生FAV gamingの強みはなんでしょうか?

Retloff:全員が自分たちの現状を理解しながら、普段の練習に対してストイックに取り組んでいる点ですね。決してまだ最上位に通用するチームではないことを全員が理解しています。一日一日を決して無駄にせず真剣に取り組む姿勢こそがチームの強みかなと思います。



――なるほど。練習への取り組み方はどのような感じでしょうか?

Retloff:毎回毎回のスクリムでしっかりコンセプトを決めて取り組んでいます。そこからデータをまた取って、どんどん修正していっています。



――次の大会での活躍が楽しみですね。

Retloff:そうですね。 データは多ければ多いほど、修正点が出てくるので。言い訳にすぎないのですが、今回の大会(VCT Stage3)では時間がなくてデータを集めれませんでした、次の大会では結果を残せたらと思います。



――最後に、新生FAV gamingの目標を伺ってもよろしいでしょうか?

Retloff:まずは国内大会優勝を一番に狙ってますね。最上位のプロが生活をかけて本気で頑張っているのであれば、それに次ぐチーム、そこに届いていないチームは睡眠時間を削ったり、自分の時間を削ったりするなど、命がけで頑張らないと追いつけないと思うんですよね。

これは冗談抜きで。そうでもしないと差が縮まらないんです。

この意識を持ちながら、もっと練習に取り組んでやっていければなと思っています。まずは日本1位ですね。

――ありがとうございました!

Retloffさん


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